なぜ会社員時代の仕事が猛烈につまらなかったのか?──脳の構造から読み解く“職場の不一致”

第1章:はじめに

私は脳科学者でも心理学の専門家でもありません。
ただの一人の、30年近く会社員を続けてきた人間です。

そんな私が今、なぜこんな記事を書いているのか。
それは——「あの頃、どうしてあんなにも仕事がつまらなかったのか?」という疑問が、退職後もずっと心に残っていたからです。

ある日、ふと目にしたネット記事で「脳には右脳と左脳があり、それぞれ役割が違う」という話を読みました。
さらにいくつかのYouTube動画を見たりしているうちに、こんな仮説が浮かびました。

「もしかして、自分が会社員時代に感じていた“仕事の退屈さ”は、脳の使い方のバランスが崩れていたからなんじゃないか?」

この記事は、そんな素人の仮説をもとに、「脳」と「会社員生活」の相性について考えてみた記録です。
同じように、会社がつまらないと感じていた(あるいは感じている)人に、何かヒントになれば嬉しいです。

第2章:戦略を立てるのは、本当は好きだった

私はもともと、凝り性な性格です。
何かにハマると、とことん調べて、戦略を立てて、試してみたくなる。
いわゆる「趣味」と言えるようなことも、ただ楽しむだけではなく「どうすればもっと効率よく楽しめるか?」を考えるタイプでした。

たとえば、釣り。
「今の時期、この場所、この潮の流れなら、○○という魚が狙える」
そう予測して早朝から出かけ、狙い通りに目的の魚が釣れた時は、まさに快感でした。

あるいは日帰り旅行。
土地勘のないエリアでも、事前に地図とにらめっこして観光名所とグルメスポットをリストアップし、「この時間にここ、昼はここ、午後はここ」と工程を立てて動く。
計画通りにうまく1日を回れたときは、非常に充実感がありました。

こうしてふり返ると、私は「戦略を立て、それに沿って動き、成果が出ること」に喜びを感じるタイプだったように思います。
ところが——会社の仕事となると、話はまったく違いました。

第3章:なぜ会社では“戦略的思考”が封印されたのか?

釣りや旅行では、戦略を立てて動くことが楽しかった。
ところが、会社の仕事ではなぜかその感覚がまったく湧かなかったのです。

毎朝同じ時間に出社し、会議や資料作成や社内調整に追われる。
どんなに手順通りにこなしても、それが本当に意味のある仕事なのかどうかさえ分からない。
しかも、自分の判断で動けることはほとんどなく、決裁や根回しが必要な案件ばかり。

戦略的に考える余地がない。
むしろ「余計なことを考えるな」「空気を読め」「とりあえず言われた通りにやっておけ」という無言の圧力。

今思えば、あの頃の私は、こういう状態だったんだと思います:

■ 平日(9〜18時)
・脳のCPU:20%稼働
・思考の自由度:極めて低い
・脳の声:『おい、俺たち使われてないぞ…』

■ 土日(釣り、日帰り旅行)
・脳のCPU:95%稼働
・思考の自由度:最大
・脳の声:『うおおおおお、久しぶりに自由だあああ!』

自分では「頑張っている」と思っていたのに、実は脳の大部分を眠らせたまま働いていたのかもしれない。
それに気づいたのは、会社を辞めてからずいぶん経った後でした。

第4章:右脳と左脳──自分はどちらを酷使していたのか?

会社を辞めてしばらくしてから、私はあるネット記事に目を留めました。
それは「人間の脳には、右脳と左脳があり、それぞれ得意な役割がある」という、ごく基本的な話でした。

  • 左脳言語、論理、計算、手順、分析など
  • 脳:直感、ひらめき、空間把握、全体像の理解、創造性など

「ふーん、そうなんだ」
最初はそんな程度の印象でしたが、YouTubeでいくつか関連動画を見ているうちに、ある仮説が自分の中で浮かびました。

もしかしたら、会社員時代の私は“左脳しか使ってなかった”のではないか?

仕事では、「ルール通りに」「誤字脱字なく」「手順を守って」「報告は簡潔に」。
このような、左脳的な処理が求められる場面ばかりだった気がします。

一方、右脳の出番——つまり「自由に考える」「ひらめきでつなぐ」「全体像を見て動く」ようなことは、ほとんどなかった。

ところが土日になると、右脳が一気に解放されていました。
たとえば釣りや日帰り旅行の計画では:

  • 季節・潮・ポイントなどの条件から、どの魚が釣れるかを直感的に予測する
  • 土地勘のない場所で、限られた時間の中で効率的に観光名所を回るルートを組む
  • 複数の情報の“点”をつないで、全体像を頭の中に描いて動く

これは明らかに右脳の働きです。そして、こういうことをしているときのほうが、脳が生きている感覚がありました。

もしかしたら私は、右脳優位の人間だったのに、左脳偏重の世界で30年近く働いていたのかもしれない。
今になって思えば、それだけでも、十分に「仕事が猛烈につまらなかった理由」として説明がつく気がします。

第5章:「やる気がない」のは正しかった──ただ、理由があった

会社員時代、私は特に「自分を責める」ことはしていませんでした。
ただ、やる気はなかった。これは、はっきり断言できます。

そして当時の私はこうも思っていました。

「会社の仕事なんて、つまらないのが当たり前だろう」と。

でも、今になって思うのです。

「やる気がなかったのは、環境のせいだったんじゃないか?」

右脳寄りの人間にとって、「自由に考えてよい場」「全体を見て動ける場」「直感を使える余地」がない職場は、まるで脳にとっての酸欠状態のようなものです。

だから私は、やる気がなかったことを反省していません。
それは「サボっていた」のではなく、脳が無理をしていたからです。

当時の自分にあえて言うとすれば:

「自分は別に怠けていたんじゃない。脳が“ここは自分の居場所じゃない”と気づいていたんだよ」

そして今ふり返ると、こうも思います。

要は、脳の働きに逆行して、自分をごまかしていたんです。
「生活のためだから」と割り切って、納得したフリをして。
でもそういう状態で長期間会社員を続けていると、まるでボディーブローのように、毎日少しずつ精神をすり減らしていたんだと、今になってようやく気づきました。

第6章:脳の声に従って生きることにした

会社を辞めてから、私は「仕事」に対する考え方が大きく変わりました。

右脳寄りの自分には、定型的な作業や上下関係に縛られる環境は息苦しかった。
でも、自由に構想を練ったり、未来の可能性を予測したり、点と点をつなぐような作業は、今でも夢中になれる。

実際、今の私は、平日の昼間からチャートを見ながら戦略を立てている。
誰に言われたわけでもないのに、自然と“仕事のように”集中できることがあるんです。

そして、今これを読んでいるあなたがもし、

「なんだか最近、頭を使っていない気がする」
「考えることをやめてしまったような気がする」

そう感じているとしたら——
それは、あなたの脳があなたに何かを伝えようとしているサインかもしれません。

自分の“脳の声”、ぜひ一度、耳を澄ませてみてください。

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