気づけばセミリタイヤ——50代、早期退職から始まった“ゆるFIRE”という現実

セミリタイヤ(セミFIRE/ゆるFIRE)とは?

最近よく耳にする「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」という言葉。これは、経済的自立を果たして早期リタイアを目指すというライフスタイルのことです。

ただ現実には、そこまでの貯蓄は難しいという人も多い。そんな中で注目されているのが、「セミFIRE」や「ゆるFIRE」と呼ばれる生き方です。

これは、完全に働くのをやめるのではなく、少しだけ働きながら、時間や心のゆとりを優先して暮らすというライフスタイル。いわば「完全リタイアの一歩手前」のような、柔軟な働き方です。

私は“狙って”セミリタイヤをしたわけではない

私自身は、このようなセミFIRE生活を若い頃から目指していたわけではありません。むしろ真逆で、「将来は定年まで勤め上げるのが普通」と信じていた世代です。

当時は4%ルールなどという概念も知りませんでしたし、数千万円の資産を築いてそれを切り崩して暮らすなんて、現実味がまるでなかった。

1990年代に社会人になった私にとっては、終身雇用が当たり前、転職も早期退職も「一部の変わった人がやること」という認識だったのです。

終身雇用の崩壊と、企業の“構造改革”

時代が変わったと実感したのは、リーマンショック(2008年)以降でしょうか。それまで「よほどの赤字でも出さない限りリストラはない」と思っていた大企業が、黒字にもかかわらず人員整理を始めるようになりました。

「構造改革」「選択と集中」「持続可能な経営」――そういった美しい言葉のもと、早期退職の募集は年々当たり前のものになっていったのです。

たとえば1997年ごろには、ある大手メーカーが早期退職制度を本格導入したという報道もあり、この頃から徐々に「終身雇用の崩壊」が現実味を帯びてきました。

私が退職を決断したとき

私が勤めていた会社も、例外ではありませんでした。売上はいいわけではなかったが、かといって大きな赤字が出ていたわけではなかった。

しかし、会社の将来への不安と人員最適化という名目のもと、早期退職の募集が行われました。このまま会社に残っても、人手が減る中で仕事量は確実に増える。

しかも定年まではまだ10年近くある…。そう考えると、私は「ここで辞めるしかない」という判断に至りました。こうして会社を去ることになったのです。

セミリタイヤ生活は、こうして始まった

とはいえ、退職時にFIREやセミFIREを目指していたわけではありません。ただ、退職後の生活が始まってふと気づいたのです。

「あれ?これって世の中で言われている“セミリタイヤ”ってやつじゃないか?」

たしかに、以前のようにフルタイムでは働いていない。必要な分だけ、アルバイトや投資で収入を得ようと考えている。あとは、時間に縛られず、自分のペースで生きている。

これって、セミFIREそのものじゃないか……と。

セミリタイヤ生活になった背景には、こんな現実的な要因がある

私のように「意図せずセミFIRE」になった人は、実は意外と多いのではないでしょうか。その背景には、いくつかの要素があります。

① 再就職しても前職と同じ給料は望めない

50代になると、正社員で再び高収入を得るのは至難の業です。結局、非正規や短期業務など、少し働いて少し稼ぐというスタイルに落ち着きがちです。

② 会社都合での退職には“割増退職金”がつく場合がある

これが、FIRE用資産の“代替手段”のような役割を果たすこともあります。

③ 投資による補助的な収入も取り入れる

私自身、退職金の一部を投資の元手として使い、ささやかながらFXなどで日々の収入を補完しています。

こうして、

  • 割増退職金の切り崩し
  • 少しの労働収入
  • 少しの投資収入

この3本柱で、「ゆるく働きながら暮らす」というセミリタイヤ生活が成り立っているのです。

これからは「気づけばセミリタイヤだった」が普通になるかもしれない

振り返ってみれば、私はセミFIREを目指していたわけではありません。だけど、結果としてそのライフスタイルに近いものに入っている。

そして、今思うのです。

これって、これからの時代にどんどん増えていく生き方なのではないか?

企業が毎年のように早期退職を募り、リストラが「珍しいもの」ではなくなったいま、多くの人が“意図せずしてセミリタイア生活に入っていく”のではないかと。

「いつの間にか、こうなっていた」 「終身雇用が崩れたなんて、あの頃は気づいていなかった」

そんな声が、これからますます聞こえてくるような気がしています。

【終わりに】

セミリタイヤ生活は、豪華でもなければ、怠けたものでもありません。 むしろ、“時代の流れに背中を押されるようにして”そこに辿り着く人が多いのだと思います。

そして、そこから先の生き方こそが、本当の意味で「自分で選ぶ人生」なのかもしれません。

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