先日、パナソニックが40〜59歳の社員と64歳以下の再雇用者を対象に、希望退職を募るというニュースを目にしました。しかも、条件によっては退職金に数千万円が上乗せされるとのこと。かなりインパクトのある報道でした。
ただ、この記事を読んで最初に感じたのは、「またか」という既視感と、それ以上に「この報道、何か物足りない」という違和感でした。
終身雇用を信じた世代に突きつけられる“退場勧告”
今や、企業の希望退職や人員削減は珍しくなくなりました。かつてのように「早期退職=レアケース」ではなくなった分、ニュースもどこか機械的に感じてしまいます。
経営のスリム化、再編、外部人材の活用……。こうした言葉が並ぶたびに、そこに“人間の話”が抜け落ちていく気がしてなりません。
私が気になるのは、報道の仕方です。企業が何人減らすのか、退職金がいくら上乗せされるのか、何月に分社化されるのか——そういった事実はもちろん大事です。
でも、その事実の裏側にある、「会社を去る一人ひとりの人生」には、なぜ誰も目を向けないのでしょうか?
退職後の現実を語る人は少ない
特に、今回のような対象年齢(40〜50代)は、かつて「終身雇用」を信じて入社し、長年会社に尽くしてきた世代です。
そんな彼らが突然、「君はもういらない」と宣告されるわけです。その重みや衝撃は、数字では測れないはずです。
実際に私も早期退職を経験しました。
そして、辞めてからようやく気づいたのは、「退職はゴールではなく、むしろ人生の再スタート」だったということです。
だからこそ、報道には“その先”にまで目を向けてほしいと思ってしまいます。
私見:現実は「割増退職金+非正規」の組み合わせ
ここからはあくまでも私見ですが——。
40〜50代で会社を退職した場合、前職と同じ給与水準・待遇で再び正社員として働ける人なんて、ごく一部だと思います。
大半の人は、割増退職金を少しずつ取り崩しながら、派遣やパート、アルバイトなど、比較的ストレスの少ない「出来そうな仕事」を選んで生活を再構築していくことになります。
実際、このパターンが最も多いのでは?と私は考えています。
ただ、こうした実情はなかなか表に出てきません。なぜなら、元会社員が「今はバイトしてます」と発信することは稀ですし、国や自治体が早期退職後の実態をきちんと調査していないことも一因でしょう。
“13歳のハローワーク”の早期退職者版が必要だ
だからこそ、私は思うのです。こんな時代にこそ、マスコミには役割があるのではないかと。
例えば、昔ヒットした本で『13歳のハローワーク』(村上龍)という本がありました。子どもが将来の仕事について考えるきっかけを与える一冊でした。
この本の“早期退職者版”があってもいいと思いませんか?
- 『50歳からのセカンドワーク10選』
- 『退職金を減らさずに生きるパート・バイトの見つけ方』
- 『元サラリーマンのリアルな生活費と働き方』
——そんな特集が、テレビや新聞で当たり前に放送されたら、私は本気で拍手を送りたいと思っています。
単なる“情報の垂れ流し”では人の心に届かない
世間では、早期退職後に就く仕事として「マンション管理人」「配送ドライバー」「警備」などが定番のように語られます。もちろん、
それらも立派な仕事ですが、本当にそれしかないのか? もっと多様な選択肢や、生き方に合った仕事があるのではないか?
そのあたりを丁寧に掘り下げて報道することこそ、今のメディアに求められているのではないでしょうか。
単に「大手企業が早期退職を実施しました」と事実を垂れ流すだけの報道なんて、もういらない。

むしろ、終身雇用が崩れていくこれからの時代において、早期退職の“その後”に焦点を当てた情報こそ、視聴者や読者に本当に求められていくはずです。
今後、こうした報道の視点がアップデートされなければ、名のある大手メディアであっても、いずれ視聴者にそっぽを向かれる日が来るのではないか。あくまでも私見ですが、そんな懸念すら抱いてしまいます。



コメント
ブログの更新ありがとうございます。
全く同感です。早期退職した後の進路について、マスコミにスポットを当ててほしいです。知りたい人はそんなにいないのでしょうか?知れば早期退職の現実を知れば、応じる人は減ると思います。
早期退職の実施は、終身雇用を信じた世代に対しての退場勧告、終身雇用を望まない企業の意志表示です。
もちろん応じなければ雇用を継続してもらえるわけですが、現実的にはそれなりのポジションにいてなくては、肩身が狭いでしょう。50代の会社員は本当に辛いですね。
早期退職して良かったです。
コメントありがとうございます。
私見ですが、割増退職金を受け取った早期退職者の問題よりも、就職氷河期世代などの問題の方が俯瞰的に見れば大きいと思われているのも、退職後のことが話題にならない原因ではないかと思います。
ただ、会社に残っても地獄、残らなくても決して楽観で切るものではない、的なことくらいは報道で伝えて欲しいです。
単に「○○社が早期退職募集の実施を発表・・・」だけで終わらせるのはいかがなものかと・・・・
仰るとおりだと思います。
割増退職金を貰って優遇された条件で退職する早期退職者より、就職氷河期世代などの問題の方が深刻ですよね。
早期退職者は、贅沢な退職と言っても過言ではないと思います。
そうですよね。
「とりあえず目先1年は生活できるキャッシュがあるので安心・・・」といったことを書いているFIRE生活者の方のブログを読んだことがありますが、割増分が出ていてばそのくらいは持っているでしょうし。
ただ、お金が多少あってもそれでいい、というわけでもないと思います。