「仕事が嫌いになったのは、あの上司のせいだった」

そもそも世の中に「仕事が好き」という人は、そんなに多くないと私は思っています。

稀に、研究者やプロアスリート、職人など「成果=報酬」という働き方の人は、やりがいを感じやすいのかもしれません。

でも、大半の人は“雇われの身”として働いています。そして現実はどうかというと——

「あと1日頑張れば、ゴールデンウィークだ!」
「あと1時間で定時だ、もうひと踏ん張りだ!」

こんなふうに、日々を“カウントダウン”しながら働いている人がほとんどです。そして私は、これがむしろ自然な姿なんじゃないかと思っています。

会社員時代に心を曇らせた上司の“ひと言”

私が30代前半だった頃、当時の上司との定期面談で、忘れられないやりとりがありました。

その上司は“俺は仕事ができる”と自負していて、やたらと「仕事は楽しくあるべき」と語るタイプの人間でした。面談で、こんなことを言われたのです。

「俺なんか30代の頃が一番仕事が面白かったよ。夢中だったからね」
「最近の若い奴は、なんか目立たないっていうか、普通だよな」
「自分のやりたい仕事に没頭して、気づいたら夜10時、11時だった……みたいな奴、今は見なくなったな」
「いや、別に時間から時間まで会社にいて、定時で帰るのは悪くないんだよ」
「ただ……ホントにそれで満足なのか? 物足りなくないか?」
「“仕事してて楽しい”って、思えてるか?」

ニコニコと語るその表情とは裏腹に、私は内心で凍りついていました。

—— これってつまり、「定時で帰る奴は評価しない」と言ってるよね?
—— 「仕事が楽しいと思えない自分はダメ」ってこと?
—— この人の下にいたら、ずっとプレッシャーに晒され続けるのでは……?

言い返すこともできず、ただただ「仕事が嫌いになりそうだな」と思いながら、面談を終えた記憶があります。

早期退職して見えてきた、“仕事の本当の形”

その後、私は50代で早期退職を選び、今は必要に応じてパートやバイトといった働き方を視野に入れています。

そうした「時給で働く立場」になって気づいたのは、“仕事って、もっとシンプルでいいんじゃないか”ということ。

バイトやパートって、基本的には「時間が来たら終了」ですよね。達成感とか夢中になることとか、そういうのを求められる場面はあまりない。

でもそれでいいんです。
むしろ、「仕事のあとの爽快感」や「休日前のワクワク」を楽しむために働くくらいで、ちょうどいいのかもしれない。

「仕事が楽しくないのは悪」なんかじゃない

上司に言われた「仕事、楽しい?」というひと言に、私は長らく引っかかってきました。でも今は、こう思います。

「別に、楽しくなくてもいいじゃないか」

もちろん、やりがいを持てる仕事に出会えた人は幸せだと思います。でも、ほとんどの人は“生活のために働いてる”んです。
その事実に、自信を持っていい。

「物足りなくないの?」なんて、価値観の押しつけ。
「俺の30代は……」なんて、ただのマウント。

仕事って、誰かの価値観で測るものじゃない。自分で納得できる働き方ができていれば、それで十分なんだと、今は心から思えます。

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