「相場予想は当たらない」が当たり前──FX歴2年で腹落ちした話。

「専門家の予想は当たらない」って本当?

FXを始めて2年が経ちました。今でこそある程度のトレードスタイルを確立できていますが、最初の頃は「経済の専門家やアナリストの予測が外れるたびに頭を抱える日々」でした。

でも、今の私はこう思います。「そもそも予測が当たらないのが当たり前」なんだと。

ここで最初に言っておきたいのは、私は「外れたアナリストはダメだ」と批判したいわけではないということです。

むしろ彼らは、テレビ番組などで「予想を求められる」立場にいるだけで、心の中では「本当は予測なんて無理だ」と思っているのでは、とすら感じます。

だって考えてみてください。相場は上がるか下がるかの二択

つまり予測は50%の確率でしか当たりません。

それを「80%や90%の精度で予測しろ」と言われたら、それは人間の知能の限界を超えています。

それでもアナリストたちは、番組の構成上「未来を語る人」であらねばならず、求められれば「予想」を口にせざるを得ない…。

私はそんな構造そのものに無理があると感じています。

2年間FXをやってわかったこと

何度も「予測はこうだったのに、チャートは逆に動いた」という経験をしました。

以下は、私自身がリアルタイムで見ていた印象深い5つの事例です。

尚、事例はとても下記の5つでは収まらず、キリがないほどたくさんありますが、とりあえず5つだけ紹介します。


事例①:2023年11月、FXを始めて3か月の頃に見た“未来予想”

2023年11月頃の話です。

この頃、私はFXを始めてちょうど3か月が経ったばかりの時期でした。

当時は、「アメリカの利上げは終了し、今後は利下げに向かうだろう」という見方が市場関係者の多くの一致した見解でした。

一方、日本はというと、長らく続いたアベノミクスと金融緩和も終盤に差しかかり、日銀が近く利上げに舵を切るのではという見立てもありました。

そんな日米の金融政策の違いが意識されていたタイミングで、為替レートは1ドル150円前後。

こういった背景から、「今後は円高方向に進むのではないか」とする評論家やアナリストの声が、TVでもネットでも多数見られました。

ある日、朝の経済番組で、ある女性為替アナリストが登場して、こう語っていました。

「こうした背景を踏まえて、当社では1年後の2024年末のドル円は、125〜130円くらいになるとみています

これを聞いた私はゾッとしました。まだFXを始めて3か月しか経っておらず、知識も経験も乏しい頃です。

しかもその時、私はドル円151円付近で数ロット(※最小の1,000通貨単位)を保有していました。

その番組を見た日のレートは149円後半。もし1年後に本当に125円まで円高になってしまったら、わずか1ロットでも含み損は25,000円以上……。

当時はOCO注文も損切りという考え方も持っていなかったので、「このまま151円に戻らなかったらどうしよう……」と、ものすごく不安になったのを覚えています。

ところが——その後、2024年に入っても米国経済は依然として強く、経済指標もそれを裏付けるものばかり。

利下げに踏み切る気配は全くなく、逆にドルは強含みで推移します。

一方、日本側はというと、利上げペースはゆっくりで、思ったより進まない。

結果として為替レートは2024年4月に160円まで円安が進行しました。

つまり、私が抱えていた含み損はあっさり解消。むしろ利益に転じました。

その後、2024年8月以降は一時的に139円まで円高に振れましたが、その後はトランプ氏の再選による「トランプトレード」でまた円安方向に反転。

結局、2024年末のドル円は155円前後で着地しました。

改めて思い返すと、あの2023年11月、朝の経済番組で女性アナリストが話していた、「1年後の2024年末は125〜130円になる」という予想とは、まったく逆の方向に進んだという結果になったのです。

※2023年11月~2024年12月末頃のドル/円チャート(ヒロセ通商PC取引画面チャートより)

事例②:ユーロドルのジェットコースター相場:1年でジグザグの激動

2024年1月のとある日、これも朝の経済番組を見ていた時の話です。
通貨ペアはユーロ/ドル。
この時点でレートは1.10前後で推移していました。


番組内で専門家の男性が、「ユーロ圏はドイツ経済の弱さが今後もしばらく解消されないでしょう。 従ってユーロ/ドルはこの先、1.05から状況によっては1.00(パリティ)へ向かうとみています」と話しました。


その後、確かにユーロドルはドル高方向に動きましたが、1.06ギリギリで反発し、その後2024年7月には1.12付近まで再上昇。
しかしその後は反転し、2025年年初にかけては再びドル高となり、1.01付近まで下落しました。


つまり、1年前の2024年1月の朝の経済番組で専門家が話した展開に1年後到達したわけです……
ただ、1年後ですよ?(笑)
しかも1.10付近→1.06まで下落→1.12まで上昇→1.01まで下落とこの1年間、ジグザグの動きでした。

※2024年1月~2025年7月頃のユーロ/ドルチャート(ヒロセ通商PC取引画面チャートより)

ですので、2024年にこの評論家の話を参考にポジションを持っていたら、ジェットコースターのような相場の動きに耐えなければなりませんでした。


ロットを多めに持っていれば、1.12の時点でかなりの含み損を抱え、損切しなければならなかったかもしれません。

事例③:シーズンアノマリーの罠?ニュージーランド円の長期塩漬け体験

為替相場には、いわゆる「シーズンアノマリー」というものがあります。
(※シーズンアノマリーとは、過去の統計データから特定の時期に起こりやすい傾向を示したもので、例えば「7月は円高になりやすい」といったものです。)


これに関連して、あるユーチューブ動画で2024年10月に「今買い時はニュージーランド/円」と盛んに推奨している専門家がいました。


当時、ニュージーランド/円のレートは91円前後で推移しており、「ニュージーランド/円は、3-4月頃に上昇しやすいアノマリーがある」と話していました。


私も1,000通貨単位だけでしたが、それを参考にポジションを持ちました。
イメージとしては94円くらいまで上昇すれば決済しようと思っていました(利確は2,000~3,000円を目標)。


ところが、その後ニュージーランド/円は一向に上昇の気配がなく、ずるずると右肩下がりで下落。

2025年4月にはトランプショックで一時的にリスク回避の円買いが強まり、79円台まで下がりました。
この時点で、私の含み損はこのニュージーランド/円ペアだけで10,000円を超えていました。

たった1ロット、しかも最小購入単位の1,000通貨単位で持ったポジションがこうなってしまったのです。


ちなみにこの記事を書いている時点(2025年7月)でようやく89円付近まで戻ってきましたが、長期間の塩漬け状態で投資効率の悪さを痛感しました(損切設定しなかった自分が悪いんですけどね(笑))。

※2024年10月~2025年7月頃のニュージーランド/円(ヒロセ通商PC取引画面チャートより)

事例④:トランプ就任後の相場変化:ドル一強神話の崩壊

2024年末の話です。
この時期は11月の大統領選で勝利したトランプ氏の政策期待相場で、株高・ドル高とアメリカの独り勝ち状態でした。


年末なので各報道機関(テレビやユーチューブ動画)もこぞって来年の相場見通しを話題にします。
当然ながら「来年もドル一強は揺るがないでしょう」と、多くのアナリストや評論家は語っていました。


例えば当時、155円前後で推移していたドル円相場は、「来年末はさらに円安が進み、165円や170円もありうる。将来的には1ドル200円もありうる」と語る評論家もいました。


また、ヨーロッパ圏の経済の弱さも話題となり、ユーロドルはパリティ(1.00)割れもありうるという見方もありました。
しかし、その後の状況はどうだったでしょうか?


1月のトランプ大統領の就任式以降、徐々に雰囲気が変わりはじめ、3月には「円安是正」とも取れるSNS発信があり、円安から円高方向へ相場が反転。


4月半ばには一時、昨年9月以来の139円まで下落しました。


また、弱いとされていたユーロ圏も状況が一変。
3月上旬に「猛烈なユーロ高」が襲い、ユーロドルはパリティ予想から真逆の1.10超えまで上昇し、その後7月までに1.18まで上がりました。


「去年の年末、ドル一強」「ドルが強いならあれこれ考えずドルに他の通貨を絡めれば来年のFX戦略は安泰」などと多くの経済評論家・アナリストが予想したのと全く違う展開になったのです。

事例⑤:フェドウォッチ予想の大外れ:パウエル議長の『時が来た』会見

2023年末頃の話です。
この時点で米国は今後利下げに向かうとの見方が市場の大勢を占めており、フェドウォッチ(※フェドウォッチとは、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の方向性を市場参加者が予測する指標で、市場の利上げ・利下げ予想を集計して示すものです)では、2024年の米国は9回の利下げが見込まれていました。


そのため利下げに伴い、2024年のドル指数は下落すると見られていました。
では実際の2024年はどうだったでしょうか?


年明け以降、定期的に発表される経済指標(雇用統計やCPI)が概ね強く、FRBはなかなか利下げに踏み切れません。


ようやく8月の雇用統計で雇用の減速の兆しが見られ、FRBのパウエル議長が8月末のジャクソンホール会議で「時が来た」(利下げの時期が来たという意味)と述べ、9月に最初の利下げを実施(この時は2回分の50ベーシスポイント)。


しかし、その後も米国の経済指標は強く、年内に利下げが行われたのはその後1回だけでした。
つまり、1年前の2023年に、2024年の利下げを9回と予想していたフェドウォッチの市場予想は大きく外れ、実際には利下げ回数は3回にとどまりました。


また、2025年に入ってからは、トランプ氏の関税政策に伴うインフレ懸念などもあり、この記事を書いている2025年7月時点ではまだ一度も利下げは行われていません。

アナリストを責めるのではなく、「投資とはそういうもの」と理解する

私はここで「アナリストを信じるな」と言いたいのではありません。

むしろ「予想が外れるのが当たり前」という現実を理解することが、投資を続ける上でとても重要だと思っています。

投資は「つかみどころのないもの」です。でも、それでも知識と経験を積み重ねれば、自分にとって“勝ちやすい形”が見えてくる瞬間もあります。

投資は自分の型があれば、チャンスはつかめる

私は、一目均衡表やパラボリック、RSIなどのテクニカル指標を学び、自分のチャート分析パターンを固めていきました。

すると、「これは自分の得意パターンだ」と感じる形が少しずつ分かるようになり、勝てる場面も徐々に増えてきました。

実際、2024年前半のクロス円全般の円安トレンド局面では、かなりの利確ができました。

これは予想ではなく、「チャートの形」で判断した結果です。

投資は確かに難しいですが、全否定する必要はありません。

他人の予測を鵜呑みにせず、自分の手法を磨けば、チャンスは必ずある

今ではそう確信しています。

株の予想も実は似たようなもの?

私は株のアクティブ運用(個別銘柄)は行っていませんが、積み立てNISA(オルカンなどの投資信託)を通じて株式市場にも一定の関心を持っています。

為替と同じように、株式市場にもプロの予想が日々飛び交っています。

とりわけ日経平均株価は、ドル円と同様に毎日のニュースでも頻繁に取り上げられるため、アナリストたちは常に「今後の日経平均はこうなる」と予想を求められがちです。

しかし、これもまた為替と同様、「未来を当てろ」と言われること自体が無理筋ではないかと感じています。

実際、日々の日経平均の動きを見ていても、海外の金利や地政学的リスクなど、複雑に絡み合った要素によって予想は大きく外れがちです。

要するに、「プロだから未来がわかる」という前提がそもそも幻想なのです。

最後にもう一度:アナリスト批判ではありません

何度も言いますが、この記事は「予想を外したアナリストを批判する目的では一切ありません」

相場は複雑すぎて、誰がやっても当てられないのが現実です。

株でも日経平均の予想が同様に繰り返され、「年末に4万円を超えるか」などの話題が出てきますが、為替と同じくほとんど当たりません。

それでもアナリストは予想を求められる立場にいます。

だからこそ、私たち投資家側が「予想は外れる前提で、自分の分析をもとに行動する」姿勢を持つことが何よりも大切なのだと、私は自分の経験から感じています。

※注) この記事は私自身の投資体験談を書き記しているものに過ぎず、投資を推奨・勧誘するものではありません。あくまでも投資は自己責任でお願いします。

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