勤勉は美徳なのか?

世界的に勤勉だと見られても日本国民の気持ちは満たされていない

日本人は世界的に見て「勤勉」だと言われています。

それを象徴するのがこの動画です。

この動画だけを見れば、我々日本人は世界に誇れるほど「勤勉」で真面目な国民で、日本もまだまだ捨てたもんじゃない、と思わされます。

また、日本にはまだまだ可能性があり、動画の最後で「日本はこれから必ずよくなる」と締められています。

この動画は、2012年に作られたものです。

さて、この動画から10年が経過した今、我々日本人はこの動画を見て「世界的にも勤勉さを評価される日本人に生まれてホントによかった」と心の底から思い、それで幸せな気持ちになれているでしょうか?

言うまでもないですが、答えは「ノー」です。

真面目に働いても労働者は全く幸せになっていない

会社員時代、普通に働いていても、一向に豊かな気持ちにはなれませんでした。

私は一般的にはホワイト企業と思われている会社に勤めていました。

それなのに、全く余裕など感じられない生活でした。

それどころか歳を重ねるごとにどんどんしんどくなってきて、心身ともに疲弊することが多くなっていたのが実態でした。

その理由については、自分の会社の業績が上がらないから仕方ない、思っていました(今考えると、経営層からそう思わされていた気がします)。

ただ、会社の業績不振も要因の一つではあるものの、労働者を苦しめている最大の要因は、日本の国自体がここ30年、全く成長していないことなのです。

この件については、この動画でも分かりやすく説明されています(冒頭~約4分、日本が貧乏になっている件について述べられています)。

この動画では、「日本人の多くが、日本が貧乏になっていることに気付いていない」とも述べています。

ただ、企業は儲かっていないのか?というと、そうではありません。

企業の内部留保は、ここ10年間で増加しています。

こちらの動画でそのことが数字で示されています(4分25秒過ぎに、この10年の内部留保の増加額のデータが話されています)。

つまり企業は儲かっているのに、それを社員に還元していない、ということなのです。

このような現実をデータを基に知った結果、会社員時代に「働いても働いても一向に自分の生活が楽になった実感がなかった」原因が分かった気がしました。

ただ、会社員をやっていると、こういった日本全体で起こっている現象につき、深く理解することがなかなか出来ません。

日々、ストレスを溜めながら目の前の仕事をしていると、日本全体を俯瞰的に見る余裕なんてないのです(私は全くなかったです)。

 関連記事:会社という組織は人のエネルギーを奪う

また、仮にそんな実態を知ったところで、じゃあ翌日から自分の生活が楽になるのかというと、なりません。

むしろ知ってしまったことでさらなるモチベーションの低下を招き、精神状態がさらに悪化してしまいます。

従って途中で思考停止し、考えることすら放棄してしまうのです。

結果、会社の経営陣にとっては、何も文句を言わずに低賃金で働いてくれる「勤勉」な社畜がたくさんいてくれて、内部留保を溜め込むことが出来ているというのが今の日本なのです。

勤勉さを捨てて労働者が声を上げない限り状況は変わらない

結果として冒頭の動画は「日本人は勤勉だ」ということを称賛していますが、多くの国民が経済的に苦しんでいる現状、そんなことを誇りに思ったところで、働く労働者には1円の得にもならないことが見えてきます。

労働者が「勤勉」に働いて喜ぶのは、経営者だけです。

昔は労働組合が経営陣に対して毎年賃上げ交渉を行い、労働者側が納得しなければストライキ、なんてことがよくあったと記憶しています。

私が子供の頃、国鉄(今のJR)が頻繁にストライキを行い、電車の運行が止まっていたことを思い出します。

しかし、今の時代はストライキという言葉もほとんど聞かなくなりました。

従って経営者にとっては、「勤勉」に働く今の時代の労働者は、いい奴隷になっているのではないでしょうか。

しかも今、多くの会社で経営者に使われている同じ奴隷という立場ながら、奴隷の中では偉いとされる上司が部下に様々な圧力をかけて精神的に追い込む、という由々しき事態も多々発生しています。

日本人は、子供の頃から「奴隷根性」を知らないうちに教え込まれているとも言えます。

それは、コチラの記事を読むとよく分かります。

 ⇒ 日本を破壊する「低賃金でまじめに働く労働者」

結果として、もはや我々日本人にとって、「勤勉」と世界的に称賛されることは、美徳でも何でもなくなっていると考えることが出来ます。

労働者が何も言わない(疲弊して声を上げるエネルギーすら奪われている)現状を鑑みると、この先も日本に明るい未来があるとは考えにくい、と言わざるを言えません。

  1. 同感です。勤勉なのに、日本の労働生産性はOECD38か国中27位と過去最低とのことです。悲しくなりますよね。

    • コメントありがとうございます。
      会社員時代を振り返ると、我々世代は日本の成長が止まった30年にどっぷり浸かっていたわけですから、働いても一向に楽にならなかったのは当然ですね。
      辞めるまでこのことをちゃんと認識したことがなかったですが、ユーチューブなどでいろんな方が発している情報で知ることが出来ました。
      日本はこれでいいのでしょうかね・・・(笑)

  2. 返信ありがとうごいます。
    私も認識なかったです。約33年間会社勤めをしましたが、失われた30年と言われるようになって、そうなんだと思った次第です。就職した頃は毎年ベア込みで1万円程の昇給があって、10年間勤めたら10万円も給料が上がるんだと感激しましたが全くの誤算でした。それ程の昇給があればモチベーションも上がって早期退職してなかったかもしれません。
    基本給が上がってないことが、労働生産性にも影響していると言われてますね。残業代を稼ぐのに時間をかけて仕事をするとのこと。
    税金や社会保険料もどんどん上がりましたし、働いても全然楽にならない、富を実感できない日本はこれからどうなるんでしょうか。

    • コメントありがとうございます。
      そう言われれば私が勤めていた会社も、辞める15年くらい前から昇給はなかったように思います。
      売り上げが上がらないから皆さんの給料にも反映出来ないと言って経営陣からごまかされていたように辞めてから思うようになりました。
      成長が止まった日本で売り上げが簡単に上がるわけないですよね(笑)。よほどの超ヒット商品でも生まれない限り・・・
      ただ、そういった反論をする社員がいないのは、日々組織の中で疲弊し、反発する気力も萎えているからだと、自分の会社員時代を思い出しています。